恐怖の進化: 伊藤潤二のキャリアと謎に包まれた世界
伊藤潤二: 恐怖の巨匠と悪夢の創造者
伊藤潤二の怪奇への関心は幼少期に始まり、楳図かずおや古賀新一の作品に影響を受け、不気味さや不安定なものに魅了されていった。1987年にホラー雑誌に短編漫画を投稿したことが彼の転機となり、この物語が後に象徴的な作品『富江』となって、彼のキャリアが本格的に始まった。彼は心理的な恐怖を軸に人間の不安、偏執、孤立などのテーマを取り扱い、独自のスタイルを確立した。彼のアートワークは細部へのこだわりと、読者に持続的な恐怖を与える能力で際立っている。伊藤の作品は、単なるホラー以上に人間の本質や不安、執着にまで踏み込んでいる。
ホラーを定義する上で、多くの人々は制御不能な本能的な恐怖に焦点を当てる。それは目に見えず、私たちの心の奥底に潜んでいる。伊藤はこの恐怖に形を与え、読者にそれを直視させる自然な能力を持っている。彼の作品では、現実の崩壊や未知なるものへの恐れが強調され、それにより読者は自分自身の最も深い恐怖と向き合うことになる。
彼が挑む暗いテーマの動機は、幼少期に過ごした地下通路とクモの巣が張る風呂場のある家での経験、あるいは歯科技工士としての精密さが彼のホラーアートに影響を与えたのかもしれない。なぜ彼が常に人間存在の暗部に目を向けるのかは、完全に解明できないが、彼の作品を通じて、誰もが自身の最も暗い恐怖に直面するのは確かだ。その恐怖は長く尾を引く。
彼の代表作『うずまき』はアイズナー賞にノミネートされ、2019年にはメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』の漫画化で「他のメディアからの最優秀改作賞」を受賞。2021年には『地獄星レミナ』と『盲目の惑星』で二つのアイズナー賞を受賞した。2023年にはサンディエゴ・コミコンでインクポット賞も受賞し、映画、アニメ、ゲームにまで彼の作品は広がり、ホラーの巨匠としての地位を確立している。彼の作品は、ホラーが単なる怪物や幽霊の物語ではないことを再確認させてくれる。
注目画像:伊藤潤二の肖像 ©Tetsuya Higashikawa/Asshi Shimbun Publications Inc.
子供の頃から暗いもの、ホラー、恐怖などに惹かれていましたか?それらのテーマに興味を持つようになったきっかけは何ですか?
幼いころに初めて読んだ漫画が楳図かずお先生のホラー漫画でした。それ以来ホラー漫画に惹かれています。漫画だけでなく、怖い話や映画などにも幼いころから興味がありました。きっかけは楳図先生や、TVの怖い番組、それらが好きだった姉たちの影響もあったと思います。

多くの作品で未知や説明できないものを探求しています。ホラーと美しさの境界線を曖昧にすることもありますが、これらの相反する要素のバランスをどのように取っていますか?新しいホラーのコンセプトを作成する際、どのようなステップを踏んでいますか?
ホラーと美しさのバランスについては、特に意識はしていません。物語の内容によって比重が変わりますが、そのバランスは感覚的に取っているのだと思います。
新しい作品を描く際は、私の知る限りで、今までになかったものを生み出すべく、考えます。この切り口は新しいと感じた時点で、創作のモチベーションが上がりますので、その後もその切り口を見失わないようにして、ストーリーを組み立てていきます。
彼の作品は、細部にわたる緻密さと恐ろしいイメージが融合したものであり、怪奇の巨匠としての才能を示している。

あなたの作品はしばしば人間の不安や心配を探求し、深い心理的な側面を持っています。具体的な恐怖、物語、あるいはイメージからスタートしますか?作品があなた自身の恐怖をどの程度反映しているのか、どのキャラクターやストーリーポイントが個人的な体験や恐怖に触発されたものですか?
多くの作品が自分の体験や、見聞きしたことから感じた不安、恐怖が反映されています。その恐怖が出発点である場合もありますが、別の出発点として、不思議や奇妙と感じる事柄、あるいは思い浮かぶ曖昧なイメージを出発点として、そこに常日頃私が持つ恐怖の感情を加えていくというやり方をすることも多いです。
あなたのキャラクターはしばしば未来の確実性や存在的な恐怖に苦しんでいます。運命と自由意志は、あなたの作品の中でどのような役割を果たしていると考えていますか?
私の作品はとてもネガティブな性質をもつものが多く、多くの場合、登場人物は恐怖に打ち勝つことなく破滅していきます。運命と自由意志についてはあまり考えたことはないですが、考えてみると、私の漫画の登場人物は運命に支配されているような気がします。

また、あなたの作品にはボディホラーが多く登場します。人間の体を恐ろしい場所として探求することに最も惹かれるのは何ですか?考えられないものを視覚化するという困難な課題にどのように取り組んでいますか?
あらゆる生き物中で、私は人間の体が最も怖いと思っています。それは人間の複雑な思考、感情が詰まった脳を持つ体だからだと思います。
多くの場合は変形した人体のイメージを思いついて、アイデアノートに書き留めてあるものをストーリーにするので、アイデアのストックがあるうちはいいのですが、何もない状態から生み出そうとすると、それは大変な作業で、時間がかかります。


多くの物語では、恐怖が未解決のままであり、完結しません。読者に多くの疑問を残すのが適切な物語の終わりとはどのような場合ですか?
私が重視するのは超自然現象の恐怖なので、もともと謎に満ちた超自然現象の謎を解明するということには興味がありません。とはいえ、私自身は現実の生活の中では、超常現象と噂されることについては、科学的な原因を考えますが・・。しかし私の描くホラーストーリーにおいては、基本的に原因を究明することはしません。
その超常現象が不可解で原因がわかってしまったら、がっかりするような場合は謎のまま終わらせるのがよいと思います。ストーリー上、原因を突き止める展開にしたほうが面白いと判断した場合は、そういう展開にすることもあるかと思います。
あなたのキャリアを通じて、ホラーの概念はどのように進化してきたと考えていますか?今後もどのように進化すると予想していますか?恐怖はあなたの仕事にどう関係し、人間の存在においてどのような心理的役割を果たしていると考えていますか?ホラーというジャンルが文化全般における議論にどのように貢献していると考えていますか?
私のキャリアでホラーの概念が進化したかどうかは、わかりません。常に原点に返ろうという心理があり、進化を邪魔しているのかもしれません。それに矛盾して、常に新しいものを生み出そうという気持ちもあるのですが。
私はホラーストーリーには読者に疑似的な不安や恐怖を与えて、現実の恐怖に少しでも耐性をつける役割があるのではないかと思っています。
文化全体における議論に貢献しているかどうかについては、私にはちょっとわかりません。
彼の物語では、感情が最も直接的な形で伝えられる。伊藤は内面を見つめ、私たちが避けるもの—醜さ、奇妙さ、そして最も残酷なことに、人間の状態の避けられない劣化—に取り組んでいる。

あなたの作品はアニメや映画などのメディアに多数翻案されていますが、これらの翻案にはどの程度関わっていますか?作品を他の形式に変換することにはどのような機会や挑戦がありますか?
実写映画の場合は脚本、アニメの場合は脚本と作画の設定の監修が主な関わりです。それに加えて、声優の選考に関与したりすることもあります。
あなたのキャリアを振り返って、特に大切にしている物語や作品はありますか?その理由は何ですか?まだ発見されていない引き出しの中にある作品はありますか?恐怖や不安以外で、どのような感情の深さに到達したいと考えていますか?
「富江」や「うずまき」は大切ですが、短編にも大切なものがあります。特に挙げると、「首吊り気球」「長い夢」「阿彌殻断層の怪」などが重要です。自分で言うのもなんですが、描かれる不可解な現象が面白いと思います。
長い期間引き出しにありながら、まだ描いていないアイデアというのは、あることはありますが、優れたアイデアはあまり残っていません。
恐怖や不安以外で描きたいものは、ノスタルジーの領域でしょうか。ほかの人のことはわかりませんが、私はノスタルジーに関連したものにこそ、モチベーションを上げる材料があるように思います。
「人の形をした終わりのないトンネルは、自分の存在の底知れぬ不可解さを象徴しています。」 – 伊藤潤二
あなたの作品には、螺旋や崩壊、変化といったテーマが繰り返し登場しますが、これらに惹かれるのはなぜですか?これらのテーマを今後の執筆でどのように発展させることを考えていますか?
崩壊や変化はダイナミックなシーンを伴うので、ホラーストーリーに欠かせないテーマだと思います。
今後もこのテーマを描き続けると思います。発展させられるかどうかは、描いてみないとわからないです。
富江のキャラクターのどの側面が最も探求するのに魅力的だと感じますか?富江は様々な物語を通じてどのように進化してきましたか?
富江は第1話を描いた時点では、その魅力が男たちに殺意を抱かせるという設定までは考えていませんでしたが、シリーズ化して描き進むうちに、そういった設定が加わっていきました。周囲に異常な感情を引き起こす原因が、その美貌であるということなので、富江をいかに美しく描くかという点が、チャレンジしがいのある点だと思います。
代表作には、渦巻に取り憑かれた村を描いたシリーズ『うずまき』や、知性を持つ細菌に操られる魚を題材にした『ギョ』が含まれる。


アイデアが読者にとって不快すぎるか、過度に激しすぎるかどうかをどのように判断しますか?放棄した物語のアイデアはありますか?その理由は何ですか?
心身の病気など、特定の人が不快になる要素はできるだけ排除するようにデビュー当時の担当編集者の方から指導されました。今でもその編集者の教えを守っています。
首が長くなった少女が迫害されるというストーリーがありましたが、その編集者の指摘で却下しました。
『阿彌殻断層の怪』では、人型の穴のアイデアはどこからインスピレーションを得ましたか?人間の本性について何を伝えようとしていましたか?
私は自分という存在について、「自分とは何だろう?」という不可解さを抱いており、その興味と恐怖からドッペルゲンガーをテーマにしたストーリーを多く描いてきました。「阿彌殻断層の怪」もそのテーマに沿ったものです。私は「自分」というワードを思うたびに、晴れた日に路上に映る自分の影を思い浮かべます。その影はもう一人の自分を象徴するものであり、そこから自分の影と同じ形をしたトンネルというアイデアを思いつきました。終わりが見えない自分の形をしたトンネルは、自分の存在の底知れぬ不可解さを象徴したものと考えます。
『富江』は、不死身の少女が彼女に恋した者たちを狂わせるという物語であり、人間の脳の脆弱性に通じるテーマである。
新しいホラーの領域を探求する今後のプロジェクトについてお話しいただけますか?
現在「モービーディック」を原案とし、それを翻案したホラーストーリーを準備しています。まだストーリーの詳細は具体的にはなっていませんが、新しい要素を出せることを期待しております。
写真提供: 伊藤潤二

Ciao! My name is Dominique. I’m Italian and I’m proud to be a mix. My father was an Italian chemical engineer and high school teacher, with Greek and Polish heritage. My mother is Haitian, she was high school language teacher, with Dominican, Spanish, French, Portuguese, African and Native American heritage. Being a mix makes me appreciate to want to understand different cultures and lifestyles. I grew up in Italy, lived few years in Haiti, travel around main European capitals, lived many years in China, in Spain and UK. Traveling makes me feel that we can learn something from every situation in every part of the world.
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