Dowserインタビュー「無意識の電子音響集団」の内側へ

永嶋ヒロユキが語るDowserと『Schema 1+2』

永嶋ヒロユキは1980年代後半、日本のバブル経済の最中にDowserを結成した。テレビのオーディション番組が全国的な「バンドブーム」を巻き起こしていた時代、彼は大阪近郊の西宮に住み、インディー・シーンのメインストリームとは距離を置き、公の活動もほとんど行っていなかった。音楽への入口は、ハリウッドの映画音楽と特撮テレビ番組『ウルトラマン』だった。10歳でザ・ビートルズに出会い、やがて冨田勲やウェンディ・カルロスのシンセサイザー音楽、シュトックハウゼンの作品へと興味が広がった。音楽的な訓練を受けることなく、彼はモノフォニックのシンセサイザーを逆再生やテープ・ループによって操った。

Dowserは、永嶋が友人たちと組んだバンドとして始まり、途中から寺井雅照が加入した。永嶋が東京へ移った後、バンドはいったん沈黙する。しかし福居ショウジン監督の映画『ピノキオ√964』のフィルムスコアを手がけることになり、寺井が再び参加した。宮川崇はおよそ20年前に加入している。永嶋石井岳龍大友克洋青山真治の映画音楽を担当し、Phewの近作ではミキシングを手がけ、東京藝術大学で映画音響を教えている。

Schema 1+2』は2026年6月1日、All Horned Animalsよりリリースされた。Dowserにとって数年ぶりのレーベル・リリースとなる本作は、永嶋が15年近くにわたってほぼ毎日SoundCloudにアップし続けてきたトラックから構成されている。レーベルのサラサシャが最初の2巻を2枚組アルバムとしてまとめることを提案した。各ディスクの収録時間は39分59秒。

AIの登場によって『無意識』が『エラー』や『バグ』として処理されるようになれば、それが人間にフィードバックされ、人間自身も『無意識などない』という認識を持つようになるかもしれない。それこそが『人間のAI化』ではないだろうか」”

—永嶋ヒロユキ

最初はハリウッド映画や、日本の特撮テレビ番組『ウルトラマン』などのフィルムスコアに惹かれました。その後、10歳の時に聴いたビートルズに衝撃を受け、同時期に冨田勲ウェンディ・カルロスなどのシンセサイザー音楽、そしてシュトックハウゼンなどの現代音楽にも興味を持ちました。やがてモノフォニックのシンセサイザーを手に入れたものの、音楽的な素養がなかったため(それは今も変わりませんが)、自然と逆回転やテープ・ループといった音響的な「遊び」に没頭するようになりました。1970年代後半に登場したニューウェーブやテクノポップにも熱狂しましたが、自分で音楽を始めるきっかけとなったのは、やはりThrobbing GristleSPKなどのアーティストでした。

当時、日本はバブル景気の真っ只中にあり、海外のメジャーシーンだけでなく、アンダーグラウンドのアーティストも数多く来日していました。東京ではロックバンドのオーディション番組をきっかけに「バンドブーム」と呼ばれる社会現象が巻き起こり、その中にはアングラ的な要素を持つアーティストも存在していました。私はその頃、大阪(正確には大阪にほど近い兵庫県西宮市)に住んでいました。インターネットが普及した現在とは違い、当時の情報源は雑誌やCD、レコードのみでした。東京と大阪、そして大阪と海外との間にある「距離」は、今よりも遥かに大きなものでした。一方、当時の大阪では、非常階段をはじめとする多くのアンダーグラウンド・アーティストが以前から精力的に活動していました。しかし、私はその流れ、いわばインディーシーンのメインストリームに参加することはなく、対外的な活動もほとんどしていませんでした。

RetroFuturista

Sign up to receive interviews, premieres and reviews from the edges of pop culture

We don’t spam! Read our privacy policy for more info.

テライとは大学時代に出会いました。当時から「Dowser」という名前で友人とバンド活動をしていて、途中からテライも加入しました。卒業後、私は東京へ移り、一度はバンドとしての活動がなくなりましたが、その後、映画『ピノキオv964』のフィルムスコアを担当することになり、テライは引き続き参加して現在に至っています。ミヤガワが加入したのは20年ほど前で、私のDowser以外の仕事を通じて知り合いました。ミヤガワの詳細については、こちらの紹介記事を参照してください。

https://hanatsubaki-archive.shiseido.com/jp/trip/652/

なぜなら現在の狂った世界の中で、20世紀後半のヒューマニズムは確実に自滅へと向かっており、20世紀を代表する表現である映画の多くもまた、そのヒューマニズムの価値観の上に成り立っているからです。たとえそれが、為政者や資本家にとって都合のいい偽りのものであったとしても、です。」

—永嶋ヒロユキ
Dowser interview
Dowser interview

Dowserにとって「無意識」は非常に重要なテーマです。「果たして『無意識』は存在するのか?」「触れることができない(=顕在化できない)意識が『無意識』とされるなら、それをAIが持つことはできるのか?」「そもそも『無意識』とは壮大な嘘なのではないか?」こうした問いに加え、「AIの登場によって『無意識』が『エラー』や『バグ』として処理されるようになれば、それが人間にフィードバックされ、人間自身も『無意識などない』という認識を持つようになるかもしれない。それこそが『人間のAI化』ではないだろうか」という問いの中でどのような音楽を作っていくかを考えています。

回帰ではなく、私もテライも数十年前から使っているからです。ヴァーチャル・インストゥルメントの中にヴィンテージ・シンセサイザーをシミュレートしたものがあり、非常に優れています。しかし、ハードウェアとは確実に異なる点がありますが、それらの異なる点の多くが商業的な利用においては邪魔になる「余分なもの」であり、排除されていると感じます。先ほどの無意識の話ともつながりますが、私はその排除されている部分に興味があるのです。そして、BuchlaやEMSを使う場合、完全にこちらがコントロールしているつもりでも「何か別のこと」が起きる場合が多々、あります。それは普通なら「エラー」ということになるのでしょうが、それを含めてBuchlaやEMSなどのアナログ・シンセサイザーには「他者性」があるのだと思います。残念ながら、現時点ではいかにシミュレートしても、ヴァーチャル・インストゥルメントが「他者」になることはないと考えています。

BuchlaやEMSを使う場合、完全にこちらがコントロールしているつもりでも「何か別のこと」が起きる場合が多々、あります。それは普通なら「エラー」ということになるのでしょうが、それを含めてBuchlaやEMSなどのアナログ・シンセサイザーには「他者性」があるのだと思います。」

—永嶋ヒロユキ

フィルムスコアを手がける最初の機会となったのは、石井岳龍監督の『The Master of Shiatsu』でした。その頃から「フィルムスコアのすべてを、具体音やノイズで構成したい」と考えており、『ピノキオ√964』はその延長線上にある作品だと捉えています。

映画にフィルムスコアを提供することと、Dowserで作曲することに本質的な違いは感じていません。もちろん、監督の意向や映画に求められる音楽の内容、長さの制限など条件の違いはありますが、どちらの場合も「他者」が存在するという点では同じです。Dowserでは私、テライミヤガワ、そしてアナログの電子楽器という「他者」が出会うことで、Dowserの音楽が生まれるのです。

Dowser playing
Dowser playing

「生きることは「他者」との出会いと別れであり、そこには「社会」があり、同時に「政治」も生まれるからです。そのため、具体的な行動の有無やその影響の大小にかかわらず、それらは常に音楽に影響を与え、またその音楽が社会に影響を与えるというフィードバックが続いているのだと捉えています。たとえそれが、言葉という直接的なメッセージを持っていなくとも、です。」

—永嶋ヒロユキ

大学で映画音響を教えていますが、今、映画を観ることや語ることに対して躊躇する自分がいます。なぜなら現在の狂った世界の中で、20世紀後半のヒューマニズムは確実に自滅へと向かっており、20世紀を代表する表現である映画の多くもまた、そのヒューマニズムの価値観の上に成り立っているからです。たとえそれが、為政者や資本家にとって都合のいい偽りのものであったとしても、です。しかし21世紀に入り、多くの「国家」がその「仮面」を脱ぐことをためらわなくなってきています。今でも映画が自分に与えてくれるものは大きいのですが、映画に向き合う時、このようなアンビバレントな感情を抱かずにはいられません。

元々、『Schema』は15年ほど、ほぼ毎日続けているSoundCloudへの投稿曲を選曲・編集したもので、現在はvol.10まであります。今回はAHA Discsから、その中から1と2を2枚組で発売したいという要請がありました。SoundCloudにアップする曲は、テライが送ってきたデータに私の演奏を加え、編集し、ミヤガワから送られてきた画像を選んで完成させるケースが多いです。基本的にはテライのデータを開いてから、2時間以内で完成させるようにしています(無料アカウントのため、古いアップロード曲から消えていきます)。

https://soundcloud.com/dowsermagicmemo

ジャック・ラカンSchema Lの図からの発想です。また、英語だと「skēma」、フランス語だと「ʃema」、日本語だと「shema」や「sukima」だったりする、言語の違いから生まれる語感の差異にも面白みを感じました。

最近はマルチ・スピーカー・システムを利用した立体音響での朗読劇の脚本と音楽を担当しています。Junichiro TanizakiKyoka Izumiといった日本の作家の原作を脚色しています。

https://rittorbase.jp/event/1197/ , https://rittorbase.jp/event/1407/

当然、持っていると考えています。生きることは「他者」との出会いと別れであり、そこには「社会」があり、同時に「政治」も生まれるからです。そのため、具体的な行動の有無やその影響の大小にかかわらず、それらは常に音楽に影響を与え、またその音楽が社会に影響を与えるというフィードバックが続いているのだと捉えています。たとえそれが、言葉という直接的なメッセージを持っていなくとも、です。

聴くという点では影響は受けていないと思います。

具体的な計画はありませんが、先に書いたようにSoundcloudへのアップは続けます。また、私はwebマガジン、boidマガジンで音日記の連載を続けています。

https://note.com/boid_magazine/m/m826f48921b34

Dowserとして唯一決まっている事は「メンバーが全員死ぬまで音を出し続け、絵を描きつづける」ということです。

写真提供:© Dowser


Discover more from RetroFuturista

Subscribe to get the latest posts sent to your email.

Leave a Comment

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.